相続税を安くするための対策
 
相続時精算課税制度は福音か
相続時精算課税制度という新しいしくみができて、生前贈与がしやすくなったようですが、必ずしも「節税」にはつながらないようです。
しかし、せっかくの新しい制度ですから、相続対策として有効に活用しましょう。

  1. 相続時精算課税制度は節税手法ではない
    従来、贈与税は相続税の補完税といわれるとおり、相続税の課税対象となる財産が生前に次世代に移転することを抑制する方向にはたらいていました。ところが、高齢化による次世代への財産移転の遅延化対策として、また財産の早期移転による経済の活性化対策などの観点から、新しい相続時精算課税制度のもとでは、これまでの発想を転換した生前贈与の促進が意図されています。
     しかし、税制は中立であることが前提となっているため、新たな制度の採用が必ずしも「節税」につながるかというと、そういうものではありません。

  2. 相続時精算課税を選択した場合の従来制度との比較
    相続時精算課税制度を選択したとき、それを選択しなかった場合と比べて、相続時にどのような差異が生じるかについてまとめてみました。
     
    制度を選択した場合に差異が生じると思われる項目 判定 制度を選択しない場合との比較のポイント
    生前に贈与した財産からの債務免除 制度を選択しない場合は、生前に贈与した財産からの債務控除はできない
    生前に贈与した財産の時価の変動 相続時に値上がりすればメリットになるが、値下がりすればデメリットになる
    贈与を受けた資産を申告期限後3年内に譲渡した場合の取得費加算の特例 制度を選択しない場合と同様の効果有り
    特定事業用資産の評価減の特例 制度を選択しない場合と同様の効果有り
    小規模宅地の評価減の特例 × 生前贈与した小規模宅地には適用なし
    延納期間の延長 × 生前贈与財産が不動産でも延納期間は延長されない
    物納の可否 × 生前贈与財産を物納に充てることは不可
    登録免許税の税率 × 相続の場合は0.4%、生前贈与の場合は2%
    不動産取得税 × 相続の場合は課税なし。生前贈与なら課税評価額の3%が課税される
    相続税改正への対応  
    逆相続があった場合のリスク ×  
    制度を選択しない場合に比べて ○→不利にならない  △→どちらとも言えない ×→不利になる


    このように相続時精算課税制度は、節税という観点からは、生前贈与財産の評価額の動向によって、有利になる可能性があることや、将来の相続税の改正が読めないことを除いては、不利になることが多いようです。特に相続税以外の税目、たとえば登録免許税や不動産取得税などの分野では、制度の選択による生前贈与は相続の場合に比べて不利な結果が予想されます。
     最も特定事業用資産については、事業承継を円滑に進めるという政策的な配慮から生前贈与財産でも特例の適用を認めていることは福音といえましょう。

  3. 相続時精算課税制度を賢く活用しましょう
    しかし、せっかくの新しい制度ですから、「次世代への財産の早期移転」という趣旨に沿って活用する道がないものか、工夫してみましょう。
     
    相続時精算課税制度おすすめ活用法
    1 「相続争いの対象にしてはいけない財産」、例えば「同族会社の株式」や「自宅の敷地」、「生活の支えとなる収益物件」などについては、それぞれの財産を取得するべき人に生前に贈与することによって遺産分割の対象から除外してしまうのも賢い方法です(ただし、この贈与が遺留分減殺請求の対象とならないよう、注意が必要です)。
    2 収益物件を生前贈与して、そこから得られる年々の「果実」を次世代に早期に移転することが得策といえます。高齢世代の財産が累増していくことを回避するとともに、次世代の財産を蓄積することによって将来の相続税の納税資金対策にもなります。
    3 次世代の事業資金や生活資金を、この制度を利用することによって支援することも考えられます。ただし、贈与した財産を次世代の者が浪費してしまったとしても相続財産には加算しなければなりません。
    4 相続時精算課税制度を利用するにあたって、次のように従来の制度との併用を工夫します。
    (1)親が65歳までは単純贈与を毎年励行→65歳で相続時精算課税制度選択→相続開始につなげる
    (2)父からの贈与については相続時精算課税制度を選択、母からの贈与は毎年の単純贈与にする
    (3)子には相続時精算課税制度を選択、孫には毎年の単純贈与を選ぶ


    ヒント
    遺留分減殺請求とは、相続人に認められた相続分の最低保証(例えば、相続人が妻と子の2人の場合で、妻=1/4、子=各1/8)が満たされない場合、その満たされない部分を他の贈与または遺贈分から取り返すことができる制度です。


「新・くらしの税金百科2007-2008  (財)納税協会連合会」より抜粋 


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