相続税を安くするための対策
 
預金の生前贈与と相続人の預金を認めてもらうには

相続税対策として相続人(妻、子等)の預金、株式を認めてもらい、「生前贈与」の効果を上げるには
  1. はじめに 

      (1)    相続税調査の対象が土地、貴金属等は評価が扱いにくい為、課税もれの判断のしやすい預貯金に移りつつあります。 

      (2)    預金についてよくある事は、「子供や孫名義の預貯金であるが、実態は亡くなった被相続人の預金であり、相続税の対象にすべきではないか」つまり、「本当に父親から子供に対して贈与が行われていたのか。預金等の名義は子供になっているが、その資産の実際の所有者、つまり、その資産を自由にできた人は亡くなった父親だったのではないか、(借名預金ではないか)」という問題です。
       
       

  2. 生前贈与のメリット 

      (1)    相続財産が少なくなり相続税が安くなる 

      (2)    贈与せず親が自分のものとして運用した場合、例えば、甲さんが 1,000万円を 20年間 3%運用(現在はこれほどの運用はできませんが)しますと、その結果約 1,806万円の資産ができます。
      ここで甲さんに相続が発生し、甲さんの他の財産(土地や自社株など)と合わせたところで全財産に対し相続税が 50%かかったとします。
      甲さんが 3%運用し、作った資産 1,806万円(元本 1,000万円+利息累計)に着目すると、50%相当額の 903万円の相続税を払った残り、すなわち 903万円しか、子供には残りません。相続税引き後を考えると運用利回りはずっと低くなってしまいます。 

      (3)    〈ここで提案〉
       「甲さんが運用しようとする元本(現金) 1,000万円を一度に子供に贈与する。子供は贈与税 231万円を納付し、贈与税支払後の現金を元本として子供自身が運用する。」という方法です。
       甲さんから贈与を受けた現金を元本として、甲さんの子供が 20年間 3%運用を行って、できた「子供の資産 1,390万円(元本が1,000万−231万=769万円の場合)」には、甲さんの相続発生時には相続税はかかりません。多少の贈与税は支払いましたが、上手に運用して得た果実は相続税の洗礼を受けずに、まるまる残ることになります。
       
       

  3. 贈与とは 

      (1)    贈与とは、民法549条に定められており、無償で財産を与えるとした「諾成契約」であり、当事者の合意を必要とするもので、もらった人(受贈者)が受諾する事により成立する契約です。 

      (2)    よって、「贈与の成立(履行)を主張」するには受贈者が受諾、承知、知っている、贈与を受けた認識が必要です。(借名預金等に問題)
       

  4. 未成年者への贈与 

      (1)    幼児の預金口座をつくって贈与することも認められます。 

      (2)    民法824条で、親権を行う者は子の財産を管理し、又その財産に関する法律行為については、その子を代表する。但し、子が債務を生ずる場合には、子の同意を得なければならない、とあります。 

      (3)    よって、未成年の子が親(親権者)から単純に預貯金等の贈与を受ける場合、すなわち、親権者を贈与者とし未成年の子を受贈者とする贈与契約を締結する場合は、未成年の子になんら不利益をもたらさない行為であるので、特別代理人を立てなくても贈与は成立します。 

      (4)    未成年の時期に贈与を受けた預金等を、成年になり受贈者が自分のものと認めれば、その預金は当然に子供のものとなります。未成年期間中に受贈した預金等は、成年になった時点で子供に認識させておくとより良いでしょう。 

      (5)    認識させた事実関係を立証する為に、管理状況(取引銀行、印鑑、通帳等の保管者)を変えておくのも一つの方法です。 

      (6)    もらった子供が年少で判断できない、贈与を受けたことも知らないような時には、父母で確認し、備忘記録があるとより良いでしょう。通帳等に父母のサインをしておくのも一つの方法です。 

      (7)    遠隔地に居住する子供の生活の為の銀行口座は、口座に入金された時点で子供に生活費の贈与がされたものと理解すべきでしょう。よって、生活に必要な程度の残高は子供の所有と考えて良いでしょう。
       
       

  5. 未成年者の預金の管理 

      (1)    子供の預金、受贈済の預金である事を主張する為には、

        @    預け入れの際、入金(伝)票が子供の筆跡になっているか?

        A    通帳、証書、印鑑の保管場所は?

        B    印鑑は親のものと同一でなく、子供のものになっているか?

        C    子供は知っていたのか?

        D    子供が自由に処分できる状態であったのか?
         が判断材料になります(未成年者への贈与は前記4及び下記の通り、この限りでない)

      (2)    「親権(満20歳に達しない子は父母の親権に服します)を行う者(保護者)は子の財産を管理(占有する権利、義務及び処分する権利を含む)し、又その財産に関する法律行為についてその子を代表する(子の同意不要)」とありますので(民法824条)、親は子の預貯金を子の為に占有又は処分する事ができます。 

      (3)     子供の預金は、子供の収入(所得)によるもの及び子供が相続又は贈与により取得したものと、親の金(親の所有であるが子供の名義になっているもの=借名預金=このような預金はあまり芳しくない=自分が死んだらその名義の人に贈与するつもりだろうが)とは区分して管理しておくべきです。 

      (4)    出産祝は親がもらったもので、それを子供名義にした場合は、親より子への贈与でしょう。お年玉はもらった人(子供)のものと理解すべきです。
       
       

  6. 相続人の預金である事を認めてもらうには、次の点が必要です 

      (1)    その預金が

        @    相続人(妻、子、孫)の給与、不動産、事業の所得による預金である事

        A    相続、又は贈与により取得したものによる預金である事

      (2)    贈与を受けた財産はもらった人のものです。以後の運用、管理はもらった人が行っていなければなりません。(未成年者については前記のとおり) 

      (3)    いいかえると

        @   通帳、証書、印鑑の保管、管理は相続人(妻、子等)が行っていること

        A   元金、利息の処分も相続人(妻、子等)が行っていなければなりません
         
         利息を被相続人(夫、親等)の口座に入金したり、処分したりしていると誤解を招きます。これらが完全でなければ、相続の際は子供等の名義を借りているだけの「借名預金」と認定され、相続財産とみなされる可能性もあります。

      (4)    贈与の事実の証拠として、税務署の為にも、自分達の備忘録の為にも、贈与の証拠を残しましょう。例えば、110万円(贈与税基礎控除)を少し超える額の贈与を行い、贈与税の申告及び納付を行うなどです。 

      (5)    税務上問題を残さないためには

        @   預金の申込書は自分(妻、子)で書く(未成年者については前記の通り)

        A   印鑑は自分(妻、子、孫)の独自のものを使う

        B   贈与によるものは贈与税の申告をしておく

        C   取引の銀行、証券会社は父母とは別の所にしておく

      (6)    被相続人に委託して預け入れる場合等もありますが、この場合にも銀行の入金(伝)票の筆跡には充分の注意が必要です。(子供等の筆跡にしておけば問題は少ない)
       
       

  7. 次のような場合は、妻、子、孫の預金でなく、被相続人(夫、親等)の預金(借名預金)と見なされやすい 

      (1)    相続人(妻、子、孫)の名義になっていても

        @    相手が知らない、受諾していない、認知していないもの

        A    相手が自由に処分できないようになっていたもの  


      (2)    相続人(妻、子、孫)の預金でも

        @    利息が被相続人の預金に入金されたり、被相続人が使ったりしている

        A    元金等が被相続人の預金と合算されて被相続人の口座に再預金されている

        B    被相続人の預金、生活費と混同されている

        C    通帳、証書、印鑑等が完全に区分、管理されていない


      (3)    被相続人と相続人との預金が、同一銀行に同一日に預け入れられている場合等で

        @    入金(伝)票が同一筆跡になっている(税務署は銀行から過去の預入れ時の入金(伝)票も手に入れます)

        A    印鑑が同一になっている

        B    贈与税の申告がされていない 


      (4)    上記のような場合等で、相続人の立証があいまいな場合

       
       

  8. 贈与税の時効 

      (1)    贈与済のもので、贈与税の申告がされていないものは、贈与税が課税されます。 

      (2)    申告期限後5年(悪質なものは7年)を経過したものは、贈与税の納付義務が時効になっていますので、課税されません。 

      (3)    この5年又は7年を主張するには、贈与の事実と受贈者(妻、子、孫)が受託、承知、知っている事、贈与の成立(履行)の時期の立証が大事です。
       
       

  9. その他 

      (1)    妻、子、孫の家族名義で預けられた預金は、預けた年に贈与があったものとして贈与税が課税されます。但し、贈与する意思のないもので本人の申立があり、本来の所有者に名義変更があれば、贈与はなかったものとして贈与税の課税は行われません。 

      (2)    毎年一定額を贈与する、というような契約(当初より贈与を資金源とした数年にまたがる積立預金の契約等)をすると、「定期預金の贈与」になる懸念がありますので、毎年独立した意思決定によるものであるようにすべきです。(毎年の贈与額に変化をつけるのも良い) 

      (3)    ヘソクリ(家計費の残金)は、残ったら妻に贈与するという約束(契約)があれば、その年に贈与があったものとして贈与税の対象となります。約束がなければ、家計費の残金は夫の金の預り金であり、被相続人のものとなります。 

      (4)    相続人(妻等)の収入があり、被相続人の預金等に混同され、区分されず、曖昧な場合はそれぞれの所得の比率で按分し、各人の金額を算定される事もあります。 

      (5)    法定相続人に贈与した後、3年以内に死亡したら相続財産に加算されますが、相続人以外の孫や子供の配偶者に贈与すれば加算されませんので有利です。 

      (6)    概ね言える事は、被相続人と相続人の預金等は異なる取引銀行、証券会社にしておく方が良い。調査対象にもならない場合があり、かつ被相続人のものと見なされる可能性も少ないと言えます。


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