医療法人・一人医療法人について

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  1. 1.医療法人について
    1. 1.意義

      医療法の規定に基づき病院、医師もしくは歯科医師が、常時勤務する診療所または、介護老人施設を開設しようとする社団又は財団をいいます

    2. 2.性格
      1. 1.病院、診療所の経営を主たる目的とするための法人です。
      2. 2.税法上は、届出、確定申告制度などおおむね、株式会社と同じ扱いです。
      3. 3.剰余金、配当の禁止など営利法人とは異なる点もあります。
    3. 3.医療法人の形態(種類)

      下記の5種類に分けられるが、現状では、持分の定めのある法人社団や一人医師医療法人が、大多数であると言えます。

      1. 1.医療法人社団

        複数の者が出資して設立する法人で、出資者は、社員となって、出資額に応じて出資持分を有し、退社、解散の際に持分に応じて、払い戻し、分配を受けることができます。

      2. 2.医療法人財団

        個人または、法人が無償で寄付した財産に基づいて設立した法人です。寄付者に対しても持分を認めず、解散時には、理事会で財産の残余財産の処分方法を決定し、知事の認可を受けて処分します。

      3. 3.一人医師医療法人

        昭和60年の医療法改正により設立要件が緩和され、医師一人で足りるようになり、法人形態で行えるようになりました。医療法上は、設立、運営、権利、義務に関しては、医療法人社団と差異はありません。診療所の経営収支と医師個人の家計を明確に分離することで、経営基盤の近代化と合理化を図る目的があります。

      4. 4.特定医療法人

        公共性が高いと認定された持分の定めのない社団、財団法人で、財務大臣の承認を受けた法人をいい、法人税法上、公益法人と同様22%の軽減税率の適用が、受けられます。
        条件は、(1)財産権のない財団である。(2)役員のうち親族は40%以下である。(3)自由診療報酬が、社会保険診療報酬に準じる金額である。

      5. 5.特別医療法人

        平成9年改正創設。特定医療法人ほど、要件は厳しくはありませんが、役員の同族支配の制限など公的な運営を確保、出資者の持分権はなく、地域において安定的に医療を提供します。

  2. 2.医療法人設立目的
    1. 1.医療施設の永続性 事業承継がしやすくなった
      1. 1.相続税や贈与税の税金負担。
      2. 2.法人所有とすることにより、引継ぎ、永続性がしやすい。
      3. 3.事業継承する人がない場合は、営業譲渡、合併が可能です。
    2. 2.資本集積と医療施設の充実
      1. 1.多数の人々から出資を受けることが可能となります。
      2. 2.2ヶ所以上の診療所の開設
    3. 3.経営の近代化
      1. 1.病院経営と個人家計の分離 丼勘定から決別
      2. 2.対外的信用 銀行等
  3. 3.医療法人化する税制のメリット
    1. 1.法人税 2段階比例税率の適用がされます
    2. 2.所得税 累進課税の適用を受けません
    3. 3.役員報酬 給与所得控除が受けられます
    4. 4.退職金の支払も可能となります
    5. 5.社会保険診療報酬5,000万円以下であれば概算経費控除が利用できます
    6. 6.減価償却 特別償却制度あります
    7. 7.繰越欠損金の繰延
      個人では、3年間だが法人では7年間繰越できます
    8. 8.消費税の納税義務者と課税
      • 資本金が、1,000万円未満の時は、法人成りをした当初2会計期間は免税となります
      • 大阪府においては、設立時の最低出資金は、1,000万円であり、実際は適用できないと考えられます
    9. 9.法定配当ができないので、留保金課税はありません
  4. 4.医療法人化のデメリット
    1. 1.配当の禁止
      1. 1.個人医師は、税引後の所得は、自由に使えます。
      2. 2.財産処分の不自由性
        財産の処分は、理事会の承認が必要です。
        個人のように自由に処分できません。
      3. 3.医療法人の場合は、留保され蓄積されます。
        長年の蓄積は、(出資持分にかかる純資産額)の上昇となり、相続税重課の要因もあります。
    2. 2.厚生年金が強制加入となる

      個人でも5名以上であれば、強制加入
      健康保険は、医師国民健康保険加入している場合が多い
      そのときは、厚生年金のみ加入となります。

    3. 3.交際費の損金算入に限度額がある

      個人では、事業を遂行するために必要と認められる限り限度額はありません

  5. 5.医療法人の節税効果
    1. 1.近年の税法改正により、所得税は、住民税を合わせて最高50%となり、医療法人の有利さも減少しています。
    2. 2.一般的には、法人が有利と言われているが、院長個人の総所得金額が、比較的低額な場合には、個人経営が有利です。
    3. 3.図 課税所得と税率の解説
      • グラフの通り、所得が高くなると、個人より法人の税率が高くなります。
      • 法人化すると医師の所得は事業所得から給与所得となり、給与所得控除が適用されます。
      • 職務、責任内容にもよりますが、奥様など青色専従者が理事に就任され、より多くの報酬が支給でき、所得の分散が図れます。
      • 税率のみで比較した場合の分岐点

        横軸は、課税所得金額です。所得税では、所得控除後の金額です。
        個人医師で、1,000万円を超える方は、法人の検討をおすすめします。

        課税所得と税率

        (ご注意)医療事業に関わる事業税は、社会保険診療報酬部分につき、個人法人ともに非課税となっています。このグラフでは、社会保険診療報酬割合が100%に近いものとして省略しています

  6. 6.医療法人の種類と相違点一覧表

    概要、形態を医療組織をもとに整理すると下表となります。

    右にスライドすると、情報を閲覧できます。

     社団財団特定の医療法人
    (租税特別措置法67条の2の規定により大蔵大臣の承認を得た医療法人)
    診療施設の規模
    1. 1.病院(20ベッド以上)
    2. 2.診療所(0から19ベッド)ただし、常時医師または歯科医師が勤務するものであること
    3. 3.老人保険施設
    1. 1.40ベッド以上の病院
    2. 2.20から39ベッドの救急病院
    3. 3.15から19ベッドの救急診療所(規模は左項に同じ)
    4. 4.その他特殊地域にある場合
    設立者 個人 個人または法人(ただし財産を寄付するものに限る)
    財産を出す形及びその権利 [出資]出資したものは社員となり額に応じて出資持分を有する。 [寄附]寄附行為であるから設立者は、設立後法人に対し一切の請求権はない。
    構成機関執行機関 理事(理事会)
    原則として3名以上
    理事(理事会)
    理事の互選
    原則として3名以上
    理事(理事会)
    評議員会で選出
    6名以上
    議決(評議)機関 社員総会 評議員会 評議員会(必置)
    評議員は理事会で推薦した者のうちから理事長が依属する理事数の2倍以上
    監査機関 監事
    社員総会で選任、1名以上
    監事
    理事会で選任、1名以上
    監事
    評議員会で選任、2名以上
    以上3つの機関の同族制限 - 例)
    理事6名の場合2名以内
    評議員12名の場合4名以内
    会議の定足数・議決数 特別重要事項(解散・合併・定款変更など)を除いては社員総会理事会、評議員会とも過半数でよい。 理事会・評議員会とも重要事項2/3以上、その他は過半数
    解散時の残余財産の処分方法 出資持分額に応じ出資社員へ返還する。 理事会で処分方法を定め知事の認可を受けて処分する。 国、地方公共団体、公益法人、その他同種の医療法人などへ寄附することとし、寄附者へ返還することはできない。
    診療報酬の制限 特にない(健保の指定を受けないことも可) 自費患者に対する診療報酬請求額は、健保算定額を超えてはならない。
    従来の設立例 多人数の者が出資しあって施設を作ろうとするとき。
    1. 1.会社など法人立の施設を独立法人に分離させるとき。
    2. 2.現在、事実上人格なき社団でかつ、役員間に同族性のない場合で、正式に法人格を得たいとき。
    設立者の設立趣旨が公益性を主とし、解散時に残余財産が自己の手に帰さなくとも病院等が永続して運営されればよいものをいう。

    (注)「特定の医療法人」については、所轄税務署(国税庁)にお問い合わせ下さい。

  7. 7.一人医師医療法人設立、登記手順図解

    日本医師会が作成した、「設立手続図解」です。事前相談、設立、認可、登記までの流れを理解ください。
    主な認可要件も例示していますので、参考にしてください。

    設立手続図解

    主な認可要件
    常勤医師数 診療所に常勤医師2人以下。但し診療所1ヶ所につき2人以下ならばよいので、2ヶ所以上の診療所を有するときの常勤医師総数は3人以上の場合もあります。
    病床数 19床以下
    理事 原則として、3人以上
    監事 1人以上
    理事長 医師または歯科医師が就任すること
    資産等 医療法人運営に必要な不動産、医療機器、医薬品、職員、資産等があること。不動産は長期の賃貸借で、医療機器等はリース契約で可能です。
    自己資本比率 20%以上が望ましい
    運転資金 2ヶ月分以上必要
  8. 8.経営形態による、一人医療法人と個人事業との比較表
    経営形態・項目 一人医師医療法人 個人医師事業
    開設 事前に許可申請必要 原則的に届出にて可
    開設者 法人 個人医師
    代表者 理事長 個人医師
    登記 必要 不要
    執行機関 理事会 個人医師
    配当 禁止 自由
    診療所の管理者 個人医師(理事長・理事) 個人医師
    診療所数 複数開設可能 1ヶ所のみ
    立ち入り検査 有り 無し
    会計年度 任意(1年) 1月1日から12月31日
    税務申告 決算終了後2ヶ月以内 翌年の3月15日まで
    課税税目 法人税、住民税、事業税 個人所得税、住民税、事業税
    課税関係 法人の利益について法人税等が課せられ、理事長や理事は、役員報酬が支払われ給与所得の源泉所得税が課せられる 診療所の利益について事業所得として所得税が課せられる

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