医業・歯科医業の
財務管理について

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診療所や医院の経理・会計処理においてよく見受けられるのが、事業と私生活が分離、区分されていない、いわゆるドンブリ会計が多いことです。
窓口の現金や医院口座等の預金から私生活のための支払や事業主である先生個人のプライベートな支払がされたり、事業上の経費である薬品や看護婦等の人件費が事業主個人の預金口座から支払われたりと公私混同のケースが目立ちます。

  1. 1.公私混同の経理処理による弊害
    1. 会計処理が複雑になる。
      1. 会計事務所への支払額が高くなったり、事務員への人件費支払が多くなる。
      2. 処理に要する時間がかかり、タイムリーな会計情報が得にくくなる。
        不正や誤りの発見が難しくなり、正しい会計処理ができなくなる。
    2. 正しい事業所得の計算が困難になる。
      1. 税務調査において修正される事が多くなる。
      2. 経理がわかりにくくなり、経営成績の把握が難しく、有効な対策、経営改善を打ち立てにくくなる。
    3. 事業経営に対して外部の評価が低くなると共に私生活についても覗かれる。
      ※外部=事務職員、会計事務所、税務署、借入先の銀行など
      1. 試算表、元帳に事業外である私生活・個人的な取引が表現され、混同されることになり、医院経営に対する取り組み姿勢の是非を懸念される。
      2. 私生活部分について問題視されたり、質問も受け答えなければならないわずらわしさがある。
      3. 金融機関からの融資が受けられにくくなる。
  2. 2.経理システム改善のヒント
    1. 窓口現金収入について
      ※窓口現金収入=保険窓口収入+自由診療収入+雑収入
      1. 窓口現金収入については、普通預金等に日毎、又は週毎に収入額を全額そのまま預け入れるようにすれば、普通預金の入金欄がそのまま窓口収入一覧表になります。
      2. 窓口現金収入から経費等の支払をしないため、診療終了時の現金残高は、その日の収入合計と合致することになり、レジ合計と照合することで誤りの発見や不正を防止することも可能になります。
    2. 小口現金制度の活用
      1. 小口の経費支払用として定額の現金を普通預金からの引出し等により用意します。
      2. 窓口収入金額をの全額をそのまま普通預金等へ預け入れすることができます。
    3. 預金口座
      1. 事業用である医院口座、通帳(事業の預金)と私生活や個人的プライベートに用いる普通預金口座、通帳(私生活の預金)は区分しておきましょう。
        ※事業の預金と私生活の預金は取引銀行をも変えていたほうが混同がなくなります。
      2. 特に会計事務所に会計処理を依頼している場合には、公私の区分をはっきりとしておく必要があります。
    4. 信販カード(クレジットカード)の区分
      1. 信販カードを使用する場合も、事業用と私生活・個人用を混同しないように区分しましょう。
      2. 複数の信販会社を活用することで可能となります。
    5. 薬の仕入、給与の支払等の預金口座からの引き出し
      1. 預金口座からの引き出し額は、要支払額と同額を引き出すようにしましょう。普通預金等の支出欄を見て支出の内容が明確にわかるようにしておくことが大切です。
      2. アバウトな金額を引き出し、その中でやりくりして経費等を支払うようなことをすると後でわからなくなり、使途不明金や経費の計上漏れを招くことになるので厳禁です。
      3. 特に注意したいことは、給与、賞与をアバウトに引き出すことです。
        給与・賞与は差引支給額を必要な金種まで算出して引き出すことです。
      4. これらの問題も、支払を銀行振込、給与振込にすればすべて解決します。
    6. 生活費の引き出し
      1. 事業用の普通預金等から資金を引き出す場合は、その都度少額を引き出すのではなく、一ヶ月分をまとめて(又は月2,3回にわけて)定額を引き出すようにしましょう。
      2. 定額を引き出すことで、事業上の資金繰りの見通しをすることが楽になります。
      3. 経営者の生命保険、所得税、市県民税は、事業(医院)の経費にはなりません。私生活の預金口座から引き落とすようにしましょう。
    7. 青色申告者の「専従者給与」について
      1. 専従者の給与も親族に対するものとはいえ、労務の報酬です。他の職員と同じく決まった日に支払うようにしましょう。
      2. 専従者給与も、医院における所得計算上、経費率に含めて配分計算しますので、専従者給与の届出、支払を取りやめる人もありますが、資産の分散、相続税対策からしても、専従者給与は取るべきです。
        ※白色申告者の専従者控除、又は青色専従者給与は、経費率の適用を受ける場合、重複して控除することはできません。
      3. とはいえ、資産状況、所得額(本人)、専従者の源泉所得税の税額との絡み、バランス等により、検討が必要です。
        ※所得計算で経費率を使った場合でも、専従者給与を支払っていれば、所得税、市民税は支払わなくてはなりませんが、労働の報酬として資産の分散が明確にできたことになります。

        (例)
        専従者給与を40万×12=480万円支払った場合
        所得税等約45万円<贈与税63.5万円

    8. 領収書・請求書・納品書等の保管について
      1. 証憑書類の保管は、月ごとに袋を用意してこまめに保存するようにしましょう。
      2. 綴りこみ・整理も大切なのですが、まずその前に紛失しないことがもっと大切です。
      3. 保存する箇所(袋)を決め、その都度その都度保存していくことが大切なのです。
      4. 後で、という考えは厳禁です。
    9. MS法人との区分
      1. MS法人は、いうまでもなく医院・診療所とは独立した人格をもったものであることをもう一度再認識しましょう。
      2. 医院・診療所とMS法人との商取引に客観性があるかどうか。経費の支払において各々支払うべき金額を各々が適正に支払っているかどうかチェックしましょう。
      3. 外部からの請求書・領収書も医院に対するものとMS法人に対するものは区分し請求先名も的確にしましょう。
      4. 医院からMS法人への支払、MS法人から医院への支払についても、請求書、領収書を作成しましょう。
      5. MS法人についても、預金口座は独自に開設し、医院の方で常時立替払いするような事は好ましいことではありません。
      6. それぞれが支払うべき経費を肩代わりしたり負担されたりしているとMS法人の存在理由そのものがなくなり、税務上の問題が発生してきます。
      7. 相互に独立したものであることを前提として、消耗品にいたるまで明確に区分された会計処理が必要です。
      8. 医院の職員とMS法人の職員の福利厚生、慰安に要する費用についても各々区分して負担するようにしましょう。

預金等の区分管理一覧表の例

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