MS法人設立について

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MS法人の活用

MS法人とは、いわゆるメディカルサービス法人の略で、現在医療法によって医療法人が行うことのできない営利事業を担わせるために設立された「会社」のことです。

眼科経営とコンタクトレンズ販売は密な関係にありますが、コンタクトレンズは医療用具であってもその販売は医療用具販売業とされて、医療法人の非営利性に抵触するとされます。
こうした場合には、医療法人とは別組織である会社(MS法人)を設立して、販売はその会社に担わせるという方法が利用されています。
他には、リネン類のクリーニング業、喫茶店経営、薬局経営等に利用されているようです。

MS法人と呼ばれていますが、法的な形態としては、一般の営利法人である株式会社(有限会社)です。

  • (「収益事業」については、特別医療法人に関しては認められており、また「附帯業務」は一般の医療法人にも認められていますが、医療法による限定列挙ですので自由ではありません。
    なお、本来業務に「附帯する業務」は、厚生省通知で示されています。)

MS法人の設立

MS法人は一般の会社ですので、その設立にあたっては、医療法人等と異なり監督官庁の認可は不要です。
定款の認証、株主総会(社員総会)、取締役会等の決議、出資金払込みを経て登記を行うことで設立できます。
但し、営業にあたっては許認可を要するものがありますので、その点は十分に検討しておく必要があります。

MS法人役員の検討

MS法人は、多くの場合、発起人の関係する(役員となっている)医療法人と密接な関係をもつことを前提としていますので、役員構成を検討しておく必要があります。ここは、単に会社設立を行おうとする場合と異なる点といえます。

医療法人とMS法人は、取引関係にあって利害の相反する立場となります。そこで「医療法人」と「MS法人」の代表者(理事長と代表取締役)が同一人物であると、利害相反する立場を同一人物が兼ねることになります。
理事は、法人から業務執行につき「委任」を受けた形になっています。利益相反する2法人の代表者が同じ人物であるときは、医療法人はその意思決定において原則である非営利性を貫かねばならず、一方で営利法人であるMS法人は、会社という性質上利益(営利)を追い求めます。
よって、同一人物が両法人の(理事会・取締役会等の審議を経ていても)代表権・業務執行権をもっているために、医療法人において営利法人の影響が否定できません。
医療法人の大原則である「非営利性」に抵触すると言えるでしょう。MS法人の代表取締役は、医療法人の理事長は避けるべきであるといえます。

  • (取引を行う両法人の代表者が同一であれば、民法の108条の双方代理にあたります。医療法人とMS法人の取引関係が、単なる債務に履行に当たる場合、もしくはあらかじめ理事会・取締役会で許諾があった場合、取締役会で承認があった場合などは、会社法356条等によって、双方代理禁止の定めは適用されないものの、医療法人とMS法人の関係を見るときは、医療法54条の主旨とする医療法人の非営利性という観点から、その貫徹を前提として考慮すべきでしょう。)

理事長でない理事の場合を検討してみます。

理事は、民法上では対外的に法人を代表するとされます。しかし、医療法人においては、多くの場合定款により「理事長のみが医療法人を代表する」こととなっていると思われます。

(医療法46条の3第1項により医療法人では理事長を定めることとされ、同条第3項において「理事長は医療法人を代表する」こととなっています。医療法は理事が法人を代表することを定めた民法53条、及び、理事の代表権に制限を加えても善意の第三者に対抗できない旨を定めた民法54条を準用していませんから、結局医療法人では「理事長のみが法人を代表する」こととなります。このため、モデル定款19条や「医療法人運営管理指導要綱」(ただし、この要綱は一人医師医療法人は対象外)I 2役員(4)1では「理事長のみが代表する」としています。)

医療法人の平理事(代表権のない理事)がMS法人の代表取締役を兼ねている場合、医療法人の意思決定においては、理事会における制御がなされ医療法人の代表権もありませんので、問題ないと考えられます。
反対に、医療法人の理事長がMS法人の平取締役を兼ねることも、同様の理由で問題ないでしょう。

なお、理事長、理事が、

  • MS法人に出資すること
  • MS法人の監事になること

については制限はありません。

社会福祉法人が関連法人を設立する場合は、「社会福祉法人審査基準」「定款準則」等の規定を参照し、より詳細な検討を加える必要があります。

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