法人成り・法人化のメリット

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1.法人成りのメリット

  • 会社を立ち上げて事業を行う場合、個人事業者で行うのか、法人設立をして行うのか、どちらが得なのか?
  • 個人事業を行っているが、そろそろ法人化した方が良いのか?
    1. 法的には、、、 個人は「無限責任」です。 資産が無く支払能力がなくても出世払いの義務があります。 法人は「有限責任」です。 役員が財産を持っていても、会社に担保提供、個人保証等をしていなければ、個人財産まで取られることはないでしょう。
    2. では、具体的なところで法人成りのメリットはなんなのでしょうか?

 

メリット
対外的な信用が大きい
法人は「法をもって人と成す」という通り、それ自体が一つの人格となりますので、法人として契約をしたり、法人として資産を所有する等可能です。
個人事業者に比べてしばられる法律も多くなりますが、その分外部の人からの信用力があがります。
人材の確保
人材を確保する際にも法人の方が個人事業者に比べ比較的容易に優秀な人材を確保することができます。
欠損金(損失)の繰越が9年間可能
青色申告をしている場合に赤字が出た時に、その赤字を向こう数年間の利益に充当することです。個人事業者の場合には損失の繰越が3年間しかできませんが、法人の場合には9年間繰り越す事ができます。
所得分散による節税
個人事業者の場合にも事業専従者給与として生計を一にする家族への給与が認められますが、法人の方がその幅が広がります。
節税策の幅が広がる
後に記載しますが、経費の考え方が違いますので、法人の方が節税の幅が広がります。
借入がし易い
上記と同じような理由ですが、個人事業者に比べ法人の方が金融機関からの借入がし易くなります。
儲けが多くなった場合にはメリットとなる事項
事業主本人の所得区分の違い
個人事業者の場合には、事業所得として収入金額から必要経費を引いた残りに対し税金がかかりますが、法人の代表者となった場合には、給与所得となりますので、給与所得控除(サラリーマンに認められる概算経費のような存在)をすることが出来ますので、法人・個人合わせた場合の税金が安くなる事があります。
個人事業者で社会保険の強制適用事業所となった場合
個人事業者で5人以上の雇用者がいる場合には、損得の比較が税金だけになりますので、法人成りをした方が得になるケースが多くなります。
デメリット
事務の手数が増える
個人事業者の場合、簡易な簿記による計算も認められており、自分で申告書を書いて申告する事もできますが、法人の確定申告書となるとなかなか一般の方では難しくなります。
消費税の免税事業者の期間を捨てる事になる
設備投資が膨大になった場合など一部例外もありますが、事業開始と同時に法人を設立すると、消費税の免税事業者となれる期間が短縮するケースが多くなります。
社会保険加入が必要となる
デメリットというと語弊がありますが、個人事業者の場合5人未満であれば健康保険と厚生年金に加入する必要はありませんが、法人の場合全ての法人が加入しなければなりません。社会保険加入による負担増が節税メリットを上回るケースが多くなります。
もちろん、老後にもらえる金額に差がつくという最大のメリットもありますので、一概には言えませんが当面の負担としては増加するケースが多いのが現実です。

2.経費について

一般的に法人の方が個人より経費の範囲が広いイメージです。

  1. 1.個人事業者の経費
    個人事業者の場合は、それぞれの経費について、業務上の経費なのか生活用の支出なのかを判断する必要があります。
    例えば、車が一台しかない場合に車にかかった費用が業務上の経費なのか生活用の支出なのか判断しなければなりません。
    総収入金額に対応する売上原価その他その総収入金額を得るために直接要した費用の額
    その年に生じた販売費、一般管理費その他業務上の費用の額
  2. 2.法人の経費

    法人の場合には、法人税法上損金(いわゆる経費)となるものは全て経費となります。

  3. 3.個人事業者では必要経費とならない又は一部しかならないが法人では経費となるもの
    1. 1.生計を一にする家族への給与
    2. 2.自宅兼事務所である場合の個人に対する家賃
    3. 3.生命保険料(契約者法人・受取人法人)
    4. 4.借上げ社宅の家賃の内法人負担分
    5. 5.法人所有資産への災害等による損失

3.一定の結論

このように見てみると、法人成りのメリット・デメリットというよりも、正しくは、「税金や社会保険負担の多寡で組織を選択するものでは無い」という事になります。
手取り額で組織を考えるというよりも、事業が何を売りにしているのか、また、その後の事業展開を考えたうえで組織を選択するということのようです。本来は当たり前の考え方ですが、ついついメリット・デメリットという言葉に踊らされそうになるものです。

  1. 1.事業の売りは何か(商材・技術・ノウハウ・人脈)
  2. 2.得意先は消費者か事業者か
  3. 3.運転資金の規模はどの程度か
  4. 4.何人の組織にするか、将来への展望
  5. 5.組織は家族中心か否か

【参考】
以下具体的数字を入れたシミュレーションです。
左が個人事業者、左から二番目が法人、その右が法人の場合の役員報酬に対する税金の計算です。社会保険料の会社負担分を考慮すると、2,000万円を超える所得でも個人事業者の方が手取り額が多くなります。

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